九州大学の土壌学研究室では、土壌自体の研究をはじめとして、植物、環境、生態系との関わりについて研究を行っています。
土壌調査は土壌学の基本。
野外で穴を掘って土壌断面を調べて、
サンプルをとります。
農地での土壌調査や研究も行います。
土壌の養分状態や水分状態を調べます。
化学分析で、土壌の状態を探ります
土壌に色々な試薬を反応させて成分を抽出し、
分析機器で、土壌の養分や有機物、鉱物の状態を調べます。
栽培試験で土壌と植物の関係を調べよう。
様々な条件に調製した土壌で植物を栽培して、
植物の生育調査や、植物と土壌の化学分析をします。
本研究室では、土壌を様々な鉱物や有機物からなる天然の化学物質として捉えています。
土壌調査、化学分析、スペクトル分析によって土壌の化学的特徴を明らかにすることを基礎として、自然環境の理解と保全、植物と土壌の関係の解明に関する研究を行い、農業および環境分野の発展に寄与します。
日本では縄文時代あたりから人為的に広く草原が維持されてきたようです。このような草原では、貴重な在来の草本植物がいのちをつないでいます。そして、このような生態系を維持するためには、古くから維持されてきた土壌特性をそのまま保つことが重要であることもわかってきました。そのためにはどのような管理が重要なのか調べています。
世界自然遺産である小笠原諸島では、一部の地域で、海鳥が海から島の⼟壌中へと植物栄養元素を運び込むユニークな機能を果たしていることがわかってきました。このように、小笠原諸島の陸域生態系とその物質循環を、土壌を調べることによって解明する研究に取り組んでいます。また、小笠原諸島の一部では、野生化した家畜の踏圧によって土壌流出が起こりましたが、これらの家畜を駆除した現在でもなかなか植生は回復していません。これは、土壌流出によって植生が回復しにくい土壌特性となってしまったためであることがわかってきました。これらの結果を踏まえて、今後、どのような管理が必要なのか調べています。
土壌中に存在しているリンは、鉄・アルミニウム・カルシウムなどと水溶解度の低いリン酸塩の沈殿を形成したり、土壌鉱物に特異的に吸着したり、または土壌有機物の一部として存在しているため、土壌に存在するリン全体のごく一部しか植物に利用されません。植物によるリンの利用特性は土壌の種類によっても大きくことなり、火山灰土壌では植物によるリンの利用率が特に低くなっています。土壌生成、土壌分類、土壌の深さなどに影響される土壌中リンの化学形態や植物への利用可能性や、土壌のリン循環について、比色分析、誘導結合プラズマ発光分析装置、核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定により、解明を試みています。
地球において土壌は大量の炭素を保持しており、大気の二酸化炭素(CO2)濃度を制限しています。日本においては、火山放出物から形成される黒ボク土という土壌が、炭素含量が高い、黒くて厚い土壌層位をもっていることが多いです。地球温暖化を抑制するため、私たちは、土壌の炭素貯留メカニズムの解明、炭素貯留速度モデルの構築、効果的な炭素貯留手法の開発に取り組んでいます。これらの目的のため、私たちは土壌の化学分析として、14C年代測定、炭素と窒素の同位体比(δ13C、δ15N)、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)などを活用しています。
土壌は6つの土壌生成因子(母材、気候、地形、時間、生物、人為)の影響を受けて形成されます。土壌断面は土壌生成過程を反映しています。このため、土壌調査や採取した土壌試料の分析によって土壌がいかに形成されたかを推測することができ、また、土壌断面の情報に基づいて土壌を分類できます。土壌調査では、穴を掘って土壌断面を作り、特徴にしたがって断面をいくつかの層位に分けます。野外での土壌断面の記載と、各層位から採取した土壌試料の室内分析は、土壌の研究において非常に重要な情報となります。
過去数年分の卒論などの題目を紹介します。